近年、ニュースなどで多く目にするIoT(Internet of Things)という言葉。さまざまな機器やデバイス(モノ)がインターネットに接続され、相互に情報をやり取りして制御し合うことで、モノがインターネットのように繋がる仕組みを指します。このような最新技術の話となるとアメリカ西海岸、サンフランシスコのシリコンバレーが思い浮かびます。しかし、IoTの発展を握るカギは西海岸だけでなく、東海岸にも多く存在します。アメリカ東海岸のIoT最新動向や今後のIoTの可能性についてノバテック株式会社の技術本部長(CTO)、穎川 廉氏に話を聞きました。
穎川氏は西海岸と東海岸の違いについて「一概にはいえないが、大きく分けて西海岸は半導体のような単品の開発が多く、東海岸はシステムインテグレーターが多い」と言います。例えば、東海岸ではフィラデルフィアに最大手のケーブルテレビ会社Comcast、ニュージャージーには最大手の電話会社AT&Tの持つベル研究所があります。穎川氏によれば、このような傾向を受けて、IoTの今後を左右する新しいサービスを提供する企業が東海岸に現れ始めているそうです。
エンドユーザーのフラストレーション、デジタルファティーグの解消
IoTの発展のカギを握るのは、エンドユーザーのフラストレーション、デジタルファティーグ(digital fatigue:停滞感 疲労感)をいかに早く解消するかにあると穎川氏は言います。さまざまなデバイスがネットを経由してクラウドに繋がり、クラウドからエンドユーザーに情報が提供され、逆にエンドユーザーがデバイスを操作する。この時、いずれか1つでも不具合を起こせばユーザーには情報は提供されず、デバイスを操作出来なくなります。単にスマートフォンがフリーズした程度であれば再起動すれば治ります。しかし、IoTでさまざまなモノがつながると、仮に問題が生じた場合、どこで不具合が生じたのか簡単には特定できません。例えば、スマートフォンで自宅の防犯カメラのアプリを使っている時に、映像が見られなくなったとしましょう。それはスマートフォンの問題なのか、通信の問題なのか、防犯カメラの問題なのか、アプリの問題なのかがすぐにはわかりません。その結果、エンドユーザーのフラストレーション(不満)が高まり、使用を止めてしまうことになります。そこで、IoT全体をシステムとして問題を解決する、インフラのスペシャリストとなる会社が必要となります。穎川氏によれば、そのような会社が東海岸で徐々に設立されているそうです。
さらに穎川氏は、IoTにより身の回りにデジタルデバイスが増え、情報が大量に提供されることで起こるデジタルファティーグを解消する事もIoTの発展において重要であると言います。それには、発生する多くの情報を直接ユーザーには届けず、クラウドの中で一度整理する。その上で、エンドユーザーが本当にメリットと感じている、必要としているデータに一度変換し、ワンストップで届ける事が重要となります。このようなサービスを提供する会社も、東海岸では次々と登場しているそうです。システムやサービスに強い東海岸の企業の特徴といえます。
IoH+ IoT= IoE。これからのIoTに必要なこと
穎川氏は言います。「今までのIT業界は人を相手にネットをひいていた。つまりIoH、Internet of Humanだった。それが終わって今度はモノを繋げる時代、IoTになった。更に、人や物、あらゆる事がつながるIoE、Internet of Everythingになっていく。」
IoTでは家電や車など、あらゆるものがネットに繋がります。これにより、今まではネットとPCだけ扱えればよかったIT業界も、家電や車など全く異業種の技術を扱わなければなりません。穎川氏は加えて「ノバテック株式会社はエレクトロニクス分野だけでなく、工業用フィルターなど、自動車分野をはじめ各種の業界と協力関係にあり、総合的な開発力があります。」とも言いました。ITだけでなく、化学や工学など、業界の垣根を越えたコラボレーションが必要となる時代がそこまで来ています。